最高裁判所第三小法廷 昭和26(れ)2502 判決
主 文
原判決中有罪部分を破棄する。
被告人を懲役六月に処する
但しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
第一審及び原審における訴訟費用(但し第一審において証人A、同Bに
支給したものを除く)は被告人の負担とする。
本件公訴事実中昭和二二年政令第一六五号違反の事実について被告人を
免訴する。
理 由
被告人C弁護人花村四郎同柏木博の各上告趣意は後記書面のとおりである。
弁護人柏木博の上告趣意について。
同第一点について。
所論は、刑訴四〇五条所定の上告理由にあたらない。なお、原判決挙示の原審公
判廷における被告人の供述によつて、所論原判示第四の事実についての故意を認め
ることは可能であり、原判決に所論理由齟齬その他の違法はない。
同第二点について。
所論は、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。のみならず、新刑訴法施行前に
公訴の提起があつた事件の、同法施行の日以後の審理にあたつては、刑訴施行法一
三条、刑訴規則施行規則三条三号により、引き続き一五日以上開廷しなかつた場合
でも、必要と認ある場合に限り、公判手続を更新すれば足りるのであるから(昭和
二四年(れ)二〇〇〇号同二五年二月一五日当裁判所大法廷判決、集四巻二号一六
七頁参照)、原審の訴訟手続に所論の違法はない。
同第三点について。
所論は、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。但し、所論のうちには、原判決
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の挙示した被告人に対する所論各聴取書中の供述が、強要されたものであるとの主
張部分があるが、これを憲法三八条違反の主張と解するとしても、所論強要の事実
を認めるべき根拠はないから、右主張は前提を欠き採用できない。そうして、所論
Dは、原審では検察官からその証人尋問を請求したのであつて、原審は、これを採
用して証拠調の決定をしたが、その所在が不明で召喚ができなかつたため、その決
定を取り消して右請求を却下したのであり、しかも同人は、すでに第一審公判で、
弁護人の請求により、証人として尋問せられ、被告人に対し充分に尋問の機会が与
えられているのであるから、いずれの点からいつても、原審が右Dに対する聴取書
を証拠としたことにつき、刑訴応急措置法一二条の違反はない。なお、原判決に所
論のような理由齟齬があるとはいえないし、その他原審の事実認定に所論の違法は
認められない(昭和二五年(れ)一二八四号同年一二月一二日第三小法廷判決、集
四巻一二号二五四三頁参照)。
弁護人花村四郎の上告趣意について。
同第一点について。
所論は、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。のみならず、所論原判示は、麻
薬取締法三九条違反の犯罪事実の摘示として、充分に明瞭であり、所論の非難は根
拠がない。
同第二点について。
所論は、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。また、被告人の所論第一、二審
公判における供述中、Eが麻薬中毒者であることを否認した趣旨の部分は「原判決
がこれを証拠としているのでないことが明らかであるから(同人が麻薬中毒者であ
ることについての被告人の認識は、原判決挙示の他の証拠によつて認められる)、
原判決の事実認定に所論のような違法はない。
同第三点及び第四点について。
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所論は、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。なお、被告人に対する所論各聴
取書中の供述が強要によるものであるとの主張部分を、憲法三八条違反の主張と解
するとしても、これを採用できないことは、柏木弁護人の論旨第三点につき判断し
たとおりである。また、原判決挙示の証拠により、所論原判示事実を認めることは、
不合理とはいえず、原判決の事実認定に所論のような理由齟齬その他の違法は認め
られない。
同第五点について。
所論は、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。そうして、原判決は、挙示の証
拠により、被告人がE及びDを、麻薬中毒者と診断したものと認定しているのであ
るから、所論原判決に対する非難は、結局この点についての事実誤認の主張に帰着
する。
同第六点について。
所論は、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。
同第七点について。
柏木弁護人の論旨に対する前記判断のとおりである。
しかし、本件公訴事実中、昭和二二年政令第一六五号違反の事実(原判決摘示第
一の事実)は、昭和二七年政令第一一七号大赦令一条八三号、一一七号にあたるの
で、刑訴施行法二条、三条の二、刑訴四一一条五号、旧刑訴四四八条、四五五条、
三六三条三号により、原判決中有罪部分を破棄し、右事実については免訴の言渡を
しなければならない。
よつて、原判決の確定した麻薬取締法違反の各事実のうち、第二の(一)及び第
三の各事実につき昭和二三年法律第一二三号麻薬取締法四一条、五九条一項四号、
第二の(二)の事実につき同法三九条、五七条一項、第四の事実につき同法一六条、
五九条一項一号をそれぞれ適用し(いずれも懲役刑を選択)、刑法四五条前段、四
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七条、一〇条により、(第二の(二)の罪の刑について)併合罪の加重をした刑期
内で、懲役六月を量定し、情状に照して同法二五条により三年間右刑の執行を猶予
することとし、なお、旧刑訴二三七条一項を適用して、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり判決する。
検察官 安平政吉出席。
昭和二七年一二月二日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 小 林 俊 三
裁判官 本 村 善 太 郎
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